あいちトリエンナーレで朗読してきました

「この秋は何で年よる雲に鳥」(芭蕉)。寄る年波を押して、今年の秋は私の出演イベントが目白押しです。宣伝も兼ねて列挙しておきますと、10月16日、詩歌梁山泊シンポジウム「宛名、機会詩、自然」(出版クラブ会館)。10月24日、日台現代詩交流「台湾現代詩とアイデンティティの表象をめぐって」(跡見学園女子大学)。10月26日、アトリエ・エルスール公演「UTUTU2010」(大阪サンケイホールブリーゼ)。10月29日、日吉ポエトリー・フェスティバル「言語を横断する詩の試み」(慶応大学日吉校舎)。10月30日、日本現代詩人会国際交流「アメリカの詩人フォレスト・ガンダー氏を迎えて」(早稲田奉仕園)。11月6・7日、現代詩セミナーin神戸「詩のことばと定型のことば」(神戸女子大学)、11月17〜21日、しずおか連詩の会(グランシップ静岡ほか)。どこかで読者諸兄とお目にかかれたらうれしいですね。
さて、こうした目白押しの皮切りにといいましょうか、9月26日、あいちトリエンナーレ2010で朗読してきました。あいちトリエンナーレ2010というのは、建畠晢さんを芸術監督に、名古屋市内各地で行われている大規模なアートフェスティバルですが、その一環として、詩の朗読会も企画されたというわけです。朗読者は、ほかならぬ建畠晢さんと、俳人名古屋ボストン美術館館長の馬場駿吉さん、それに私の三人。加えて、アーチストの市川武史さん(今回は音楽演奏)とヴァイオリン演奏家の来島里奈さんが共演してくれます。
会場となったのは、大須観音の近くの七ツ寺共同スタジオという、名古屋では伝説的なアンダーグラウンド文化の発信地。今回は栗本百合子さんの奇抜なインスタレーションがありました。漆黒の空間のなかで、天井と床、舞台と客席があべこべになっています。さらに、舞台には薄紗のようなスクリーンが垂れていて、そこに、条件さえ整えば、壁に穿たれた小さな穴を通して、カメラ・オブスキュラよろしく、外の風景の倒立像がうっすらと写るのだそうです。
「このユニークな劇場の舞台で、それぞれに個性的な朗読と演奏が、どのようなコラボレーションを見せるのか、(……)「都市の祝祭」たらんとするトリエンナーレの渦中にあって、ひときわチャーミングなファンタスマゴリーを、私たちの前に浮かび上がらせてくれるイベントになることでしょう」とは、チラシに書かれた建畠さんの言葉です。
トップバッターは馬場さん。みずから撮影されたというベネチアの写真と来島さんのノイズたっぷりな演奏を背景に、水都にゆかりの詩人アンリ・ド・レニエに捧げた独吟半歌仙を披露しました。ついで建畠さん。その黒い諧謔に満ちた詩的世界はまさにこの空間にぴったりという感じで、建畠さんの声をカットアップしてさまざまに加工してゆく市川さんの「音楽彫刻」もスリリングでした。最後に私。「街の衣のいちまい下の虹は蛇だ」のコーダ部分を朗読しましたが、偶然とはいえ、例のスクリーンを「街の衣」に見立てて、ささやかながら「都市の祝祭」に詩の言葉を絡ませることができたような気分になりました。