2010-01-01から1年間の記事一覧

アメリカの詩人フォレスト・ガンダー氏を迎えて

さる10月下旬、アメリカの詩人フォレスト・ガンダー氏が来日しました。たった一週間という短い滞在でしたが、私にとっては忘れ得ぬ交流の日々となりました。 まず10月26日、彼はなんと、大阪まで私どもの公演「UTUTU/2010」(サンケイホールブリー…

「わたげ」の機微(その3)

さすがは『音楽』の詩人那珂太郎ですね。私は断然那珂説につきたい。というのも、この「わたげ」の機微こそ、定型が生み出す力なんですね。「わたげ」と読むと、7・5の音数律からわずかにずれてしまうけれど、そのずれ、その差異が「音韻の磁場」に、すな…

「わたげ」の機微(その2)

夢見るようにいうなら、私は、音数律の問題をより広くリズムの問題へと解き放ちたいんですね。あらゆる文学生産には定型(=音数律)を生み出す力があり、それを無視することはできないけど、同時に、定型(=音数律)が生み出す力もあるのではないだろうか…

「わたげ」の機微(その1)

前回紹介したように、今年の秋は私の出演する詩のイベントが目白押しです。特筆すべきは、そのなかに定型をめぐる企画がふたつも組まれていることでしょうか。ひとつは、もう終わりましたけど、10月16日の詩歌梁山泊シンポジウム(三詩型交流企画)「宛名、…

あいちトリエンナーレで朗読してきました

「この秋は何で年よる雲に鳥」(芭蕉)。寄る年波を押して、今年の秋は私の出演イベントが目白押しです。宣伝も兼ねて列挙しておきますと、10月16日、詩歌梁山泊シンポジウム「宛名、機会詩、自然」(出版クラブ会館)。10月24日、日台現代詩交流「台湾現代…

今年上半期の詩集から(その2)

つぎに、北川透の『ブーメラン乱帰線』(思潮社)。北川さんといえば、詩と詩論の両面において長いあいだ現代詩を牽引してきたひとりですが、近年ますます旺盛な筆力をみせて、まったく衰えというものを知らないかのよう。この詩集も、古希を越えた詩人の仕…

今年上半期の詩集から(その1)

ちょっと遅くなってしまいましたが、今年上半期の詩集を回顧してみましょう。去年下半期は若手の活躍が目立ちましたが、今年上半期は中堅・ベテランが大いに気を吐いたようです。 いうまでもなく日本語は、漢字仮名交じり文という独特の表記システムをもつ言…

マラルメ全集完結

マラルメ全集(筑摩書房)がついに完結しました。全5巻。最初に出た第2巻「ディヴァガシオン他」の奥付をみると、1989年。なんと、完結まで足掛け20年にもおよぶ難事業だったんですね。その原因のひとつは、「賽の一振り」をはじめとする詩作品の翻訳の困…

荒川ランボー交響(その3)

わたくしとはたとえば、はじめての身体の者だ、 ほかのどの家にもまして生き生きと、 降り立つ虹によぎられて、 日々あらたに身体はめざめるほかなく、 目覚めた時、 周囲の明るい空気の流れが丘や谷を作っていること、 またそれが渦巻く輪郭を形成している…

荒川ランボー交響(その2)

それはさながら、麦の穂にちくちく刺されながら、 野の草を踏みに行くのと変わらない、 夢見るぼくは、足うらに草のひんやりを感じるだろう、 そのぼくのように、 生きうる、生きうる、 あるいは音楽だ、床の小山は、 これからキーボードとなっていくものな…

荒川ランボー交響(その1)

先日、ニューヨークで荒川修作さんが亡くなりました。あるいは、その生物学的生存を終えました。とてもショックです、残念です。荒川さんとは生前、ほんの少しですが、交流がありました。あれは1993年頃でしたか、詩人仲間数人と誘い合って、おそるおそ…

イスラエルの国際詩祭に行ってきました(その2)

二日目はツアー。主催者側がチャーターしたバスで、まずナザレを訪れました。聖母マリア受胎告知教会。ちょうどイースターのミサが行われていました。つぎに訪れたのは、地中海沿いの美しい町ハイファ。丘からの眺めがまるでサンフランシスコです。初日に知…

イスラエルの国際詩祭に行ってきました(その1)

イスラエルに行ってきました。ニサン国際詩祭イン・マグハルというのに招かれて。なかなか有意義で楽しかったです。で、以下にその報告を。 成田を飛び立っておよそ24時間ののち(パリ経由)、現地時間の4月3日午後4時すぎ、テルアビブ近郊のペングリオン国…

ポエジー夜話の核心

この「ポエジー夜話」は、正確にいえば「ポエジーについての夜話」ですが、たまにはかぎりなくポエジーそのものでもあるような夜話を書いてみましょうか、さてそこで── 詩とは、一本の街道が伸びてきていた、 詩とは、いつだったか、むしむししたスラバヤの…

エロスの詩のアンソロジーを夢見て(その2)

(現代詩篇) 10安西均「朝、電話が鳴る」 最後のエロティックな2行が秀逸。 11安東次男「女たちへの讃歌」 女陰をうたった詩なら、まずこれでしょう。 12吉岡実「マダム・レインの子供」 超現実的窃視者の詩学。 13清岡卓行「石膏」 「きみに肉体…

エロスの詩のアンソロジーを夢見て(その1)

詩であれ散文であれ、書いた原稿はなるべく書籍化するのがのぞましい。でも、なかなかそうもいかないのが売れない詩人のつらいところで、いくつかお蔵になりそうな原稿もあります。 たとえば十年ぐらい前に、「俳句界」という雑誌に一年間にわたって連載した…

旅に病んで

来週はイスラエルのニサン国際詩祭に招かれて、テルアビブに飛びます。以前に参加したミュンヘン在住の四元康祐さんからの情報ですと、とても心温まるもてなしをしてくれるところらしく、いまから訪問が楽しみです。争いの絶えない土地柄だけに、どうかお気…

去年下半期の詩集から(2)

去年下半期は若い人の活躍がめざましかったですね。まず、高見順賞に決まった岸田将幸の『〈孤絶—角〉』(思潮社)。 紐解くと目次もなく、ふつうの行分け詩の風景もひろがらず、読む者はやや不安のうちに、散文形式の断片で織りなされたページを繰っていく…

去年下半期の詩集から(1)

以前、2009年下半期の詩集を回顧したので、すこし時期はずれですけど、2009下半期に出た詩集からいくつかピックアップしてみましょうか。 詩的言語って、日常言語とはちがう、あるいはその欠陥を補うための、聖なる言語であって、隠喩を中心に組織されるそこ…

瞬間の雪

外は雪、ことしはじめての本格的な雪です、と2月2日に書いて、はやくも十日あまりが過ぎました。即時性を旨とするブログにはあるまじき遅延でしょうか。 それはともかく、温暖化プラス巨大ヒートランドの東京23区は、近年ほとんど雪が降らなくなったばかり…

デフレと詩人のすてきな関係

世界が現状のようにあることへの怒り、それゆえ世界を詩的に捉え直したいという欲望、そういう怒りと欲望があるかぎり、私は詩を書きつづける。 とまあ、今回はいきなりカッコよく決めてみました。そう、あのパリの詩人のように。いまから150年もまえの話で…

私はいまや複数の詩人主体に分裂して?

詩集『Zolo』を刊行しました。詩論集『詩のガイアをもとめて』との同時刊行で、いずれも思潮社からです。 タイトルは、ぞろぞろの「ぞろ」、soloの誤記もしくは変化、zoologyのもじりなどが複合しています。形式的には、普通の散文にかぎりなく近い文章で書…

悪疫性/フラットフィールド性/身体性

忘年会というのはただひたすら飲みまくるものと心得ていましたが、先日行われた六本木詩人会(和合亮一主宰)の忘年会は、すくなくともその一次会は、なんとアルコール抜きで長丁場の討議を敢行するというものでした。メンバーには私の名前もありましたが、…