2011-01-01から1年間の記事一覧

全米朗読ツアー(その4)

前夜の感激もさめやらぬまま、早朝にアイオワシティを旅立ち、空路で、全米朗読ツアー最後の訪問地サンフランシスコへ向かいました。霧の都を訪れるのは7年ぶり2度目。前回はアメリカ文学者山内功一郎氏の紹介で、アメリカを代表する詩人のひとりマイケル・…

全米朗読ツアー(その3)

ニューヨークからシカゴに飛び、さらにそこでプロペラ機に乗り換えて、中西部の学園都市アイオワシティへ。そこが三番目の訪問地でした。6年前、アイオワ大学のIWP(国際創作プログラム)のフェロー(恭子さんもそうでした)として滞在して以来の再訪です…

全米朗読ツアー(その2)

つぎに訪れたのは、ニューヨーク。プロヴィデンスから鉄道Amtrackでの移動です。私にとってニューヨークはじつに12年ぶり、あのときはまだツインのワールドトレードセンターがそびえ立っていました。そこで、朗読の前に、その跡地、いわゆるグラウンド・ゼ…

全米朗読ツアー(その1)

このたび、私の初の英訳選詩集Spectacle & PigstyKiwao Nomuratranslated byForrest Gander & Kyoko YoshidaOmnidawn, 2011が刊行され、それを記念するアメリカ朗読ツアーがガンダー氏ならびに出版サイドのプロデュースで行われました。全米4都市を一週間で…

ついに南米の地を踏みました(その2)

詩祭二日目。数カ所の会場に分かれての、ポエトリー・リーディングがはじまりました。午前中に訪れたバレンシア郊外、カラボボ大学第二キャンパスでは、私の朗読の出番はなかったのに、日本からの客はめずらしいのか、何組もの学生たちから、一緒に写真を撮…

ついに南米の地を踏みました(その1)

ついに南米の地を踏みました。メキシコには2年前、メキシコシティの詩祭に招かれて行ったことがありますけど、それ以南は今回が初めて。目的の地はベネズエラです。そこの詩祭に招かれたというわけですが、東京羽田からパリを経由したので、気の遠くなるよう…

木の王に会う(その2)

でも、樹木に関してひとつだけ言いたいことがあります。フランスにかぎらず、ヨーロッパや北米にはオークの木がたくさん生えていますが、日本人はあれをなんで樫と訳してしまうんでしょうね。ウイスキーを寝かせるオークの樽が樫の樽になってしまうし、競馬…

木の王に会う(その1)

フランスについて、ここらですこし書いておきましょうか。なにしろ、大学は日本文学専攻でしたが、大学院はフランス文学専攻を選び、そこを出てからも、長いことフランス語の教師をしていましたから。 ところが、困ったことに、あまり語ることもありません。…

ポエジー夜話特別版(続々々々)

ひきつづき、東日本大震災に接して書いた詩です。この国は復興するでしょう。それが人間の活動、あるいは「生存」というものです。しかし、突然に「生存」を断ち切られてしまった人々の「存在」はどうなるのでしょう。詩的想像力が引き受けるしかないような…

ポエジー夜話特別版(続々々)

即興的にせよ、こんなときにどんどん詩が書けてしまうというのは異常でしょうか。でも、書きます。書くほかありません。 谷底のアポカリプス 私は歩きまわり 仕事をしなければならない 災厄がこの地を覆い ウランがめざめているのだから おののきの夜の風 無…

ポエジー夜話特別版(続々)

廃墟について くり返し 廃墟はあらわれる 私たちの悲しみ 私たちの怒り くり返し 廃墟はあらわれる 私たちの恐れ 私たちのおののき くり返し 私たちは廃墟に立つ 無音の叫びをきき 光年の雫を浴び くり返し 私たちは廃墟に立つ 記憶の森 年代記の谷 くり返し…

ポエジー夜話特別版(続)

大震災に接して茫然としたまま、ふたたび即興的に詩を書きました。 母の手 まるで空襲のあとのような 津波で破壊された町を ひとりの 美しく年老いた女性がさまよっていた テレビの取材クルーが近づくと 息子を捜しているという 息子さんのお名前は? 災害伝…

ポエジー夜話特別版

地震発生の3月11日午後2時46分以降、ショックと心痛で仕事に手が着かなくなりました。きょう14日、これではいけないと思い、パソコンに向かいました。私は詩を書くしか能がないので、詩を書きます。 2011年3月11日 私は泣いている 町が消えた 人が消えた う…

2010年の詩集から(3)

旧「洗濯船」同人たちによる詩集刊行の同時多発ぶりを書いていますが、きわめつけは城戸朱理。『世界─海』(思潮社)と『幻の母』(思潮社)と、ひとりで二冊の詩集を同時刊行してしまったのですから。城戸さんはかつて、「洗濯船」の主導的役割を果たし、な…

2010年下半期の詩集から(2)

1980年代、「洗濯船」という同人詩誌が存在しました。城戸朱理、田野倉康一、広瀬大志、高貝弘也ら、それぞれに個性的な若手の有力詩人がそこに拠りましたが、彼らにはある共通した雰囲気があって、それは、言葉で何かを伝えるというより、言葉の生起そ…

2010年下半期の詩集から(1)

特筆すべきはまず、なんといっても、大ベテラン岩成達也と粕谷栄市が、またまた大きな仕事を成し遂げたことでしょうか。岩成さんは三部作完結編ともいうべき『(いま/ここ)で』(書肆山田)によって、粕谷さんは例によって満を持したといった感じの『遠い…