ついに南米の地を踏みました(その1)

ついに南米の地を踏みました。メキシコには2年前、メキシコシティの詩祭に招かれて行ったことがありますけど、それ以南は今回が初めて。目的の地はベネズエラです。そこの詩祭に招かれたというわけですが、東京羽田からパリを経由したので、気の遠くなるような長旅でした。
現地時間の午後3時、未知の土地を訪れるときのわくわくどきどき感とともに空港に降り立つと、さっそく詩祭スタッフが出迎え。英語の堪能なディエゴという青年が、片言程度の英語の私についてくれます。もっとも、私の方でも今回は、スペイン語でなんとかコミュニケーションが可能な妻を同行させているのですが。専用のバスに乗り込み、しかしそこからが大変でした。詩祭を主催するカラボボ大学は首都カラカスにはなく、そこから車で2時間以上離れたバレンシアという都市にあるのでした。
道中、大都市カラカスを通過しました。標高960メートル。はるかアンデス山脈につながる大地の隆起の、ちょうど北の端にあたります。山の斜面に点々と家がみえはじめたと思ったら、高層のビル群がドーンと姿をみせ、道は3車線の立体交差となって、車はあっというまに近代的な都会のなかに吸い込まれていきました。一方、山の上部のほうには、斜面に張り付いたような貧民街ランチョの圧倒的な広がりもみられ、ビル群との対比がなんとも印象的です。
カラカスをすぎるとハイウエイはふたたび山のなかに入り、やがて高原地帯を走るような感じになりました。熱帯ですが、雨林というよりサバンナに近い緑の風景がつづきます。バレンシアのホテルに着いたときにはもうとっぷりと日も暮れ、それにしても暗い。節電中の東京よりもずっと暗いんですね。
翌日が詩祭第一日目。午前中に、十人ほどの招待詩人全員へのプレスのインタヴューがありました。招待詩人はスペイン語圏が多く、通訳なしのスペイン語で応じています。私の場合は、ディエゴ君を介して、しどろもどろの英語で対応しました。内容は、あなたにとって朗読とは何か、朗読のときどんな工夫をしているか、などなど。私にとって朗読とは、文字の静謐に声の祭りを添えること、眼のためのテクストを解体し、あるいは再構成して、耳のためのアクションに変えること、なんてことをしかし、私が即座に英語で言えるわけないじゃないですか。
夜、カラボベーニョ劇場で、開会式と皮切りのポエトリー・リーディング。挨拶に立った詩祭ディレクターのヴィクトール・エマヌエル・ピントー氏は、弱冠29歳という若き詩人で、しかし早くも風格のようなものがにじみ出ていました。そのあと、今回とくに顕彰されている地元ベネズエラの長老格の詩人とパレスチナ出身でアメリカ在住という若い女性詩人が朗読しました。