ポエジー夜話特別版(続々々)

即興的にせよ、こんなときにどんどん詩が書けてしまうというのは異常でしょうか。でも、書きます。書くほかありません。




谷底のアポカリプス


私は歩きまわり
仕事をしなければならない
災厄がこの地を覆い
ウランがめざめているのだから
おののきの夜の風
無をめぐる息
その外に出ようとすると
風もまた私の身体を包み返そうとする
おろおろと
つとめて歩きまわり
仕事をしなければならない
長時間歩いても疲れない靴と
何らかの情報端末
ミネラルウォーター
それに厚手のジャケットが必要だ
凍りついた日付のうえで
なおも不穏な音を響かせているヘリコプター
仮眠をとったら
谷底のアポカリプスを読み取りに
さあ降りてゆこう
ウランがついに
めざめているのだから
地下街で眠ることを覚悟し
危険に囲まれたなかで
つとめて仕事を
しなければならない
移動から移動へ
その空隙をこそ人と名づけ
みやびな遺伝子は捨てよ
聾の夜のエリアを
肺胞はきりりとまろび出てゆくがいい
鎮めえぬ無数の生の記憶が
粘土のような私の心のどこかにも
浮いているのだ
死のときの白色ノイズさえきこえ
だが苛立ってはならない
つねに冷静さをたもち
ばかあかい泥濘を抱え込みながら
頭部では沈黙がキーンキーンとなって
淡く蒼い球が跳ねるだろう
読み取れ
もう鏡はないのですね
もう貨幣が流れるばかりではないのですね
苔むすだろう忍耐
キツクもなくヌルクもなく
風がまた吹き始め
人という空隙が
ほそい骨のようにふるえている
つとめて歩きまわり
仕事をしなければならない
私はきらら共生の
きらら
私はさりさり怒りの血の
さりさり